
しかし遠国のこととて家人も遺言通りにはできず、若草山のふもとに葬って、
そこを武蔵野と名づけた。一方、さねかづらも美佐吾との別れを始終悲しみ、
「もう一度あわせてください」と神に祈願したところ、正夢の神のお告げによって、
この坂へきて美佐吾を待っていると、昔とかわらぬ姿であらわれ、
夢うつつの中でしばらく語り合うことができたが、やがて消え失せてしまった。
それよりこの坂を逢坂と名づけたという。さねかづらは生きていてもしかたがない
と思い、坂下の池に身を投げて死んだという。
掘兼の井 昔、ここに住んでいた男が、後妻の讒言を信じて、罰としてわが子に井戸を掘らせたが、幼いために掘ることができないで死んでしまったという。
|