
カンナデンプンの1次製造は畑に近く、集荷が便利で水量豊富な小河川がある
場所に仮小屋を作って、家族単位で就労することが多い。また、地元の農民が
自分の土地で作業するのでなく、他所の者が農民から土地を借りて経営する形
態が多いように見えた。業績を上げるために、期間中は原則的に無休で作業す
るが、材料の集荷が不足した場合や屋外作業なので雨が降って仕事ができない
日は作業中止となり、休日となるようだ。経営規模が家族単位程度と小規模で
あることも排水処理に目を向ける余力を生まない原因であろう。
製造工程を示すと以下のようになっている。

搬入⇒水洗い⇒摺潰し⇒振動篩(水掛け)
⇒沈殿分離(水深20cm程度)⇒1次濃縮(円形タンク・布濾過)
濃度の高い排水は振動篩部からが圧倒的に多く、エンジンポンプの能力いっぱい
の排水が出る。沈殿分離は浅い平池で3mx20m程度最大水深で20cmの池であ
るからたいした排水量ではない。
摺潰した残渣は、ほとんど繊維質のみなのできちんと処理すれば問題は生じない
が、現状は河川に放置されてしまうことが多いようだ。その他の残渣は沈殿分離
の残渣(商品価値の低いところ)と布濾過残渣であるが、やはり河川に投棄され
ている。この製造所は町の上流部にあるので、町中の河川は真っ黒な水が流れる
ことになる。また、次の田植え時期は5〜6月なので、カンナデンプンの製造は
終了していて、河川への影響も緩和している。このため、水稲に対する悪影響が
較的少ないことが水質汚染の深刻さを緩和させているように思える。
いろいろな試み
「名古屋女子大学生活科学研究所中国学術調査団」では過去に汚染防止の実験や
提案をしている。地域の地質を利用した土壌浸透試験で土壌浄化の可能性の検討、

残渣の家畜飼料化の提案などである。98年12月には、環境汚染を自己規制す
るための教育プログラムの一環として地域集会を開催してみた。壁新聞を貼り、
食物連鎖による共生をベ−スにした環境保護と農業生産の関係などである。どの
程度効果があるか不明ではあるが、行政と住民と調査団とで活発な意見交換がで
きることがわかった。また、デンプン製造作業期間中に、直接河川に排水を流さ
ないために、5〜6月の田植えまでの間、田圃を借りて酸化池兼沈殿池とする実
験を行いたかったが、カンナデンプン排水には高濃度窒素が含まれ、田に窒素過
多をもたらすという弊害も懸念される。そこで、作業場の脇に小さな実験池を作っ
てその効果の実験をおこなった。
「天に3日の晴れなし」と言われる貴州地方では、冬は雪を見ることはほとんど
ないものの、太陽を見る日も極端にすくなく、高曇りかと思えば急に深い霧に閉

ざされ先行する車のライトさえ見えない状態になったりもする。このような状態
で酸化池の効果がどの程度期待できるのか心許なかったが、実態に沿ったデ−タ
収集の目的で1月から2月一杯までの2ヶ月間の運転での変化を計測した。
実際の運転期間は原料の関係から2月上旬までしか行われず、調査団が3月上旬に
現地に入った時には停滞状態であった。
1999年3月の調査では以前に河川水の汚染によってやむなく野菜栽培に転じ
た畑や、田植えの1月ほど前にカンナ残渣を投入し収量増加を計っているという
田など数カ所の土壌調査も合わせて行った。結果から、排水を直接使うような環
境の田では窒素濃度が高くなりすぎていて収量を落とし、残渣を利用する場合に
はそのC/N比が高いため、土壌改良効果が高いものと考えられる。
次の課題
以上の経過から、酸化池や土壌浄化といった無動力のシステムでは処理が難しい
ことがわかった。ただ、カンナデンプン製造工程での水使用量は大変多く、製品
の増産に見合う河川などの水源確保も難しくなっていることから、水のリサイク
ル技術の開発も進めなければならない。地域の特産物として発展させるためには
水問題の解決は必須である。
揚水ポンプの余剰動力で養鰻用水車を回し酸化池に酸素を供給する実験と
水の循環使用の可能性の実験を予定している。
酸化池のばっ気実験例(日本)

名古屋女子大学生活科学研究所 教授 八田耕吉
株式会社エステム技術統括本部 部長 井上祥一郎
五十音設計株式会社 保坂公人
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