ニカラグア


都市の河川は下水の排水溝となっている ゴミ埋立場(牛の餌場?)

ニカラグアの下水道事情 下水道未整備地区の衛生問題

*はじめに
人口は、一般的に経済的に優位な都市部に集中する。途上国では流れ込んだ
人々がスラムを形成していく。この地域では上下水道などのインフラやごみ
収集などの行政サ−ビスが人口増加に追いつけなず、重大な衛生問題を引き
起こしている。

* ニカラグアの概要

図−1に示すようにニカラグアは北アメリカと南アメリカ両大陸を繋ぐ地峡帯
のほぼ中央にある。この細長い回廊は中米と呼ばれ、太平洋と大西洋のプレ−
トがぶつかる位置にある。国土面積はおよそ13万平方kmで、わが国の北海
道と九州を合わせた程の面積で、そこに約350万人が住んでいる。
気候はカリブ海側が熱帯性気候で、高温多湿であり、年間雨量は3,000〜6、000ミリ
である。一方、太平洋側の年間雨量は1、900ミリであり、5月から10月までが雨
期で11月から4月までが乾期である。
人口は太平洋側の地溝帯に集中している。この地溝帯にはニカラグア湖(8、264
平方キロ、琵琶湖の12倍)とマナグア湖(1、024平方キロ)という大きな湖も
あり、肥沃な平野が発達した、自然に恵まれた美しい国である。首都、マナグ
アはマナグア湖の南岸にあり、標高は60〜100mの高さである。平均気温は27℃
であるが日本の夏よりは凌ぎやすい。ここに100万の人口がある。この国の
人種構成はスペイン系混血が74%、インデオは19%である。言語は他の中
米諸国と同じく、スペイン語を使用している。

* ニカラグアの歴史と現状

 中米地域は1520年代からスペインによる植民が始まった。ニカラグアで
は1524年にはグラナダ市とレオン市がほぼ同時に建設された。17世紀中には
グァテマラ総督府に編入され、19世紀の周辺諸国の独立運動をへて、メキシ
コ帝国に編入、さらに中米連邦入りなどの経緯の後1838年に独立するが、独立
後も政権は安定しなかった。19世紀はアメリカの影響を強く受け、その影響
下から、ソモサ政権が誕生し、その独裁は1979年まで続くことになる。
その後、左翼政権のサンデニスタ革命を経て、1990年から中道のチャモロ大統
領、昨年の大統領選挙の結果、現在のアルノルド・アレマン大統領のもとで少
し右傾化している。
1990年のチャモロ政権からアメリカ、日本などの西側諸国の援助が本格化して
いる。
 現在のGNPは400米ドル、失業率は実質60〜70%と高率である。1990年代に
綿花国際価格の暴落とサンデニスタ政権のつまずきが重なって、ニカラグアの
国内経済は壊滅的打撃を受けた。
加えて、続く干ばつなどから、農業者や農業労働者が都市に流入し、都市の機
能を急速に圧迫している。流入する人々に家を与え、給水し、ゴミ収集や下水
道などの整備計画は遅々として進まない。

*都市の構造と排水の現状

ニカラグアの首都マナグアは新しい街なので家屋は敷地の中に独立して建てら
れている。それに比べて旧い街は中世のヨ−ロッパのように街区ごとに壁面が

連続して中庭を持つ構造となっている。(図−2はその一部をスケッチしたも
のである)この街区(マンサナ)は1辺が約100m前後のほぼ正方形である
が、長さの決め方はあまり厳密ではないようだ。中世のヨ−ロッパでは2階か
ら道路に汚水を撒いたと言われるが、この住居構造を見れば納得できる。
ニカラグアは国全体が火山灰からなるため、雨水の浸透がよい。そこで、下水
道が整備されていない地域では、中庭にピットを掘って糞尿を地下浸透させて
いる。ピットは直径1.5m、深さ3〜4mくらいで、寿命は20年ほどであ
るという。いっぱいになった場合は汲み出して再生させるか、新に掘るかであ
る。再生の場合、浸透能力は次第に落ちてくるという。ピットの寿命を伸ばす
ために糞と尿を分離する便器も販売されている。(図−3)
この場合、尿は別
途排水する。また、落し紙も便器には捨てず、別容器に入れて回収している。
この習慣は下水道整備地域でも守られていて、酸化池の流入部ではトイレット
ペ−パ−を見ない。ホテルのトイレにもペ−パ−回収用のかごがあるくらい徹
底している。浸透ピットや酸化地への負荷は軽減するが、別の問題も発生して
いる。回収したペ−パ−が一般ごみとして埋め立て処分場に回るので、こちら
の衛生問題となっているわけだ。

この国では、糞尿は衛生的に処理されているので、地下水汚染の危険性を除け
ば問題を起こしていない。(一部汲み出す時に問題があるようであるが..)
 しかし、生活排水は直接道路に排水されている。道路には側溝がないので排
水は直接、舗装道路の端を流れる。
(図−4)  雨水吐けがある場合は雨水と
一緒に排除される。
旧市街から少しはなれた郊外になると、正方形の街区ではない。壁面を連続さ
せた街区でも、住居が背中合わせになった、長い区画となっている。そのほか
日本の住宅団地のような戸建て住居形態も多くなる。戸建の形態の地域は所得
の低い階層の地域とかさなっている。この地域では台所、洗濯、シャワ−、ト
イレはすべて戸外にあり、排水はそのまま道路を流れる。
道路に出る手前に桝を設け(図−5)、
排水が溜まると道路に撒いている光景
をよく見かける。一見不潔のようであるが排水が新鮮で蚊や蠅の発生がなく、
撒いた排水はすぐ乾くので、道路を流れて汚水溜まり (図−6)となり、デ
ング熱やマラリヤ、赤痢などの病気の発生源となるよりずっとよいと言える。

* ニカラグアのゴミ問題

 下水とはあまり関係ないので簡単に触れておく。一般ゴミは市の責任で回収
しているが、すべての処分場が平積みで覆土されている例はない。産業廃棄物
も処理できるところがないので、持ち込みを黙認せざるを得ない状況にある。
処分場には廃棄物分別業者がたくさん入り、有価物の回収を行ている。廃棄物
の中に注射器なども見えることから大変危険な状況であることがわかる。勿論、
粘土による遮水も行われていないので、地下水汚染が懸念され、ある都市では
水源地の上流にある処分場の移転問題が真剣に検討されている。

* ニカラグアの上水

ニカラグアの上水は現在ではほとんど地下水の汲み上げである。日本の援助も
含め各国の援助による井戸が各地に掘られている。浸透性の良い火山灰の下に
不透水層があり、150mも掘ればどこでも良い水が得られると言っても良い
くらい地下水は豊富である。

都市部の上水普及率は70%を越え、近い将来は90%を越えると思われる。
上下水道庁の努力である。そのうえ、郊外の貧困層の家庭にも各戸にメーター
が設置されていて、共同水栓は見掛けない。しかし、道路の埋設管の土被り深
さは1200mmという基準はあるが、施工時には守られていないようだ。また、舗
装されていない道路は雨による侵食が激しいので、道路がどんどん低くなり、
その分、水道管の埋設深が浅くなることになる。事実、道路から宅内に引き込
む水道管は露出している場合も多く、時には道路でも水道管が露出している場
合もある。このため、水道管の破損も多く、道路を流れる排水と接触する機会
が多い。実際に子供の病気や腹痛などが頻繁におこっているらしく、私が調査
のために郊外を歩いていると、住民からこの危険な現状を何とかしてほしいと
訴えられることもよくあった。(この国に対する日本の援助が多いことが住民
にもよく知られている)
このような現状から、将来的にも下水道が整備される計画のない地域の衛生問
題をきちんと整理して、有効な対策を立てる必要がある。

* ニカラグアの下水道
1994.10現 在 (注)(T) は終末処理場(すべて酸化池)がある都市を示す。
全国下水道整備状況
NO 総人口 整備人口 普及率
1 Estali(T) 97911 42133 43.03%
2 Somoto(T) 33143 3185 9.61
3 Ocotal 31657 3542 11.19
4 Chinandega(T) 112229 36428 32.46
5 Corinto 26172 6300 24.07
6 Chichigalpa 53012 1694 3.20
7 El Viejo 25670 1050 4.09
8 Leon(T) 190031 78750 41.44
9 Managua 1178117 608391 51.64
10 Granada(T) 71925 18151 25.24
11 Masaya(T) 97040 40278 41.51
12 Rivas(T) 28587 11662 40.79
13 San Juan del Sur(T) 9000 469 5.21
14 Jinotepe 39927 1435 3.59
15 San Marcos 11870 364 3.07
16 Boaco 20453 10976 53.66
17 Matagalpa 75000 18900 25.20
18 Jinotega 45000 15400 34.22
19 San Carlos 15039 399 2.65
合計 2161783 899507 41.61%

ニカラグアの都市は19ヶ所が下水道を持っている。そのうち終末処理場を持
つ施設は8ヶ所であが、処理施設はすべて写真 (図−7)のような酸化池であ
る。また、表−1で見るように下水道整備計画人口に対して普及率が50%を
越えている施設はきわめて少ない。しかし、それにも関わらず、予算不足から
浚渫などのメンテナンスが進まず、一部陸化していることなどから、すでに機
能低下しているという問題も発生している。しかし、下水道整備計画はきちん
と立てられていて、西暦2010年頃には目標達成できることになっている。
(多分に外国の援助次第という要素は多いのだが....) また、酸化池に
ばっ気システムを入れて能力アップの計画も進みつつある。

* 結論にかえて

 多分に状況説明的になってしまったが、ニカラグアの現状を考える時、下水
道整備計画のある地域の環境衛生は、しっかりとした計画と資金援助の予測が
あるので時間が解決してくれる状況にある。その反面、人口が郊外に広がるで
あろうと予想される地域は低所得者層の地域であり、独自で衛生問題解決は難
しい。ただ、各個への給水は計画通り進むであろうから、また、トイレは吸い
込みピット方式で行くであろうから、当面は生活排水が道路を走る現状の改善
のみを考えるだけでもよいと思う。
この国には多くのカルデラ湖があり、淡水湖であることが多い。将来の貴重な
水源資産として、この湖の汚染防止を計る必要がある。これを守るために排水
をカルデラ湖に落としてはならないという法律も成立しているが、現状が全く
追従出来ていないし、改善される見通しも少ない。
 しかし、レオン市ではこのような下水道整備の見通しの立たない地域の各個
に、腐敗層とトレンチを配置して、水洗化と雑排水処理の実験を始めていると
ころもある。これは日本の援助ではないが、NGOや市の指導のもとで、自助
努力によって解決して行くシステムで、注目できるシステムはないかと考えて
いる。

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